先日、浦和パルコの紀伊国屋書店へ行った。
本屋で本を見ていると、何故かトイレに行きたくなる人は多いらしい。
かく言う私もそうだ。
という訳で、紀伊国屋に入る前にすぐ横にあるトイレへ向かった。
トイレに入ると一番奥の個室から、親子の声がした。
まだ1人ではトイレが難しい幼い子供とその父親だろう。
自宅のトイレには慣れているだろうが、外のトイレでは色々違っており、お父さんの助けを必要としているのだろう。
お父さんは、優しくあーだこーだ教えたり、励ましたり、褒めたりしていた。
「おぉ!いっぱい出たね。」などと言っている。なんだか微笑ましい。
私は「小」だったのでとっとと済ませて、手洗い台に向かった。
私が手を洗い始めた直後に個室から、まずお父さんが出てきた。
そのお父さんは、私の横、個室から離れた蛇口の前に来て、手を洗いながら個室に向かって「ちゃんと手を洗おうね。」と声をかけていた。
そのときチビちゃんも個室から出てきて、「うん。お父ちゃん。」と返事をしていた。
そのまま私を挟んだ状態で、親子で「いっぱい出たね。」「いっぱい出た!」などと話をしていた。
ポケットからハンカチを取り出そうとして、体を少しひねった時、そのチビちゃんと一瞬目があった。
チビちゃんの目に不安そうな色がぱっと広がるのを感じた。
しかし、私とは関係ない事だと思っているので、そのままハンカチで手を拭いていた。
すると、チビちゃんは「お父ちゃん…」、その呼びかけにお父さんが手を洗いながら「ん?」と返事をする。
私は無視をして手を拭いたハンカチをポケットに戻す。
また一瞬目があった。
そしてチビちゃんが今度は大声で「お父ちゃーん!」。私に向かって言っているようにも感じた。
横のお父さんが振り返りながら「どうしたんだよ?」。チビちゃんはお父さんに駆け寄っていき、一緒にトイレから出ていった。
チビちゃんの立場で何が起きたか考えてみよう。
チビちゃん達が、トイレに入って来た時には、そこに誰もいなかった。
よそのトイレだし、1人で用をたすのには、まだ不安があった。
だから、お父さんも一緒にトイレに入った。
不安の中、個室という狭い空間で、お父さんのサポートもあり、大業をなして1つ成長した。
出てきた時は、世界が変わって見えていたかもしれない。
個室から出る時、先に出たお父さんから「ちゃんと手を洗おうね」と声をかけられた。
声の方向を見ると、ひときわ体の大きな私が立っていた。
その人がお父さんだろうと思って、しばらく会話をしていたのに、違う人だった。
声がお父さんなのに、違って見える。
サンタクロースや宇宙人と言ったおとぎ話を本当に信じてしまうような、まだまだ幼い子供だ。
いまとんでもないことが起きていると感じたのだろう。
パニックになり、助けを求めて「お父ちゃーん!」と叫んだのだろう。
チビちゃんにとっては、異次元への小さな旅だっのかもしれない。
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