先週、アルツハイマー病の薬「アデュカヌマブ」が米国食品医薬品局(FDA)により「迅速承認」された。
充分な確認期間をとらずに(本当に有効なのか?悪いところは無いのか?)、迅速承認されたという点からも、期待は大きいと言える。
アルツハイマー病は、患者そのものよりも介護をする側の負担が大きいと言われる。
しかも、その負担は終わりが見えず、絶望的な期間が長く続く。
アデュカヌマブは、アルツハイマー病の原因物質と言われる「アミロイドβ」を減らす薬だ。
アミロイドβが消えることで、アルツハイマー病の進行は抑えられるが、ダメージを受けた組織が回復するわけではない。
また、アミロイドβが生成されなくなるわけでもない。
すなわち、根治治療になるわけではない。使い始めたら、やめられない。
現段階では、少なくとも年間610万円の負担になるらしい。
2021年の日本人の年間平均収入は、436万円と言われている。
日本人は世界的に見て、収入が少ないわけではない。それでも、圧倒的に足りていないのだ。
この値段でどれくらいの人が使い続けられるだろう。
薬代を個人が全額負担しないにしても、社会全体で負担することになる。若者の負担がますます増える。
ただでさえ高齢化が進んでおり、医療費や社会保障費の負担はどんどん増える傾向にある。
高齢化が発展への足枷になっていく。
この状態で、ゼネリック医薬品が出れば、多くの人、ほとんど全てが、そちらを使うようになるだろう。
ビデオの分野でVHSがベータに勝ったように、PCの分野で互換機がIBMに勝ったように、日本車がアメ車に勝ったように、市場を席巻したものが残る。
過去を振り返ってみても、負けた方も、なんの努力もしていなかったわけではない。
品質の良さや技術の高さをアピールしたり、知的財産権等で法的に保護したり、ロビー活動をしたり、「えげつない」と感じるほどの努力をした。
それでも、その流れを変えることはできなかった。
絶対に変えられないとは言わないが、「えげつない」を越える鬼のような、悪魔のような努力が必要だろう。
ヒトにそれができるなら...
「迅速承認」は簡単に取り下げられるかもしれないらしい。
また、ゼネリック医薬品を押さえ込もうとしても、それにより社会の負担が減るのなら、ゼネリック医薬品を保護すべきと言う意見が爆発するだろう。
だれも使わない薬に価値はない。
そうなれば、開発のための努力も無駄に終わる。
鬼や悪魔が泣き言をいっても、助けようとする者がいるだろうか?
エーザイの「アデュカヌマブ」が使い続ける薬になるかどうかは、ゼネリック医薬品との競争に勝てるかどうかにかかっている。
ここからのエーザイにも期待したい。
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